21日の朝日が昇るまでが20日だ

 

この記事は体験型イベントAdventCalendar2014の20日目として書いています。
詳しくはこちら→(http://www.adventar.org/calendars/648

 

 

初めまして。佐藤と申します。AdventCalendar、毎日楽しく拝見しています。
下手なファンレターみたいな書き出しで不安になっていらっしゃる方も多いと思いますが、当該案件に関してはいまこの地球上で誰よりもわたしが不安です。連日そうそうたる面子が並ぶ中で完全に委縮しています。さながらアカギ・鷲巣・僧我と卓を囲んだニセアカギのような気持ちです。

 

本題に入る前に、簡単に自己紹介をしたいと思います。佐藤です。本名です。
某カフェの新宿店でスタッフをしています。他、SMOFという家内制謎団体のメンバーです。9月の謎キャンで「魔法少女は眠らない」、11月の謎フェスで「House of Candy」を頒布させていただきました。お買い求めいただいた方、また、本日集計結果が発表された勝手に大賞にて投票してくださった方、本当にありがとうございました。

 


 

今回は体験型イベント関連の話題ならなんでもいいということで、先日バイトの友達の誕生日にサプライズ謎解きを仕掛けた話をしようと思います。
バイト先がバイト先なので、何がしかのイベントに際して内輪向けに謎解きを用意することは今までにも数回ありました。でも本格的な60分公演をしようというのは初めてのことで、いろいろとリアリティもなければ突拍子もないアイディアが飛び出していたように思います。
当時わたしが書いていたメモがこちらです。今回サプライズされる女の子はA、一緒に企画してる友人はB、C、D、そしてわたしの4人です。
※読まなくてもなんの支障も来しません。

 

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モルダー、わたし疲れてたのね。
この黒歴史予備軍を恥ずかしげもなくLINEのトークに投げたところ、他のメンバーが常識と制止を慈愛で包んでなんとか法に抵触しない朗らかなゲームに昇華してくれました。持つべきものは謎(がつくれる)とも(だち)・・・。

 

プライズ企画当日を迎え、Aさんを貸し会議室まで連れてくるという大役を仰せつかったわたし。口実を考えあぐねた挙句一緒に晩ごはんを食べようと誘いました。
会場となるレンタルスペースはマンションの一室。予約した部屋は7階。マンションのエントランスに差し掛かったとき、Aさんが不安げな声で尋ねました。

 

「佐藤さん、今日行くお店って、本当にここでいいの?」

前提条件として、わたしはとてつもなく嘘が下手です。人狼で狼を引くと一発でばれます。人狼大学でも始終挙動不審でした。

 

「うん、大丈夫だよ」

何を聞かれてもそれしか答えられません。いやあ、うん、大丈夫、うん、えっと、もうすぐだから。要領を得ない返答でやり過ごし、715号室に着きました。中では友人が、わたしたちの到着をいまかいまかと待っているはずの部屋です。

 

「Aさん、部屋に入る前に・・・アイマスク、着けてほしいんだけど」

わたしは恐る恐る伝えました。タクシーで拉致する行程は却下されたものの、目隠し案は生きていました。ポケットからアイマスクを取り出して渡します。Aさんはごくりと生唾を飲み込んだのち、怯えた瞳で、しかし意を決したように言いました。

 

 

 

 

「佐藤さん、これ、人身売買とかじゃないよね?」

 

 

 

 

 

壁は存外薄かったようです。一拍置いて、ドアの向こうから友人たちの爆笑が聞こえました。それですべてを察したAさんはアイマスクを着けてくれ、計画は無事遂行され、最終的にAさんもとても喜んでくれました。
わたしはこの出来事を経て気づきました。体験型リアルゲームでリアルを追及しすぎると、人身売買になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いえ、なりません。すいません。

 

 

 確かに、何の前触れもなく閉じ込められるという点において、今回のケースは十分に非日常的でリアルだったと思います。
SAWを見てないので憶測でしかありませんが、きっとジグソウも「密室(真ん中に死体)で片足を鎖で拘束された2人は無事に脱出できるかなゲーム」をtwitterで告知したり、団員先行でチケットを販売したりはしていないでしょう。

 

 

わたしは常々、UDXの大型ビジョンに突然暗号とか流れないかな、とか、前を歩いてる少女のコートのポケットからひらりと落ちたメモに「たすけて」って殴り書いてあってさりげなくアイコンタクトをとられた場合はどう対処すべきか、とか、街道を歩いていたら通りかかった場所の公衆電話が必ず鳴ってついに受話器を取るとマイクロフト、みたいなことが何の前触れもなく起きないかなあと妄想しています。

もしかしたらARGというジャンルに近いのかもしれませんが、如何せん門外漢のため頭の中だけに留まってくれています。
なんにせよ、究極的にリアルな非日常体験を追及するのであれば、それは不測の事態でなくてはならず、間違っても事前にイープラスで発券し、クリップボードを持参し、時間通りに入場して席についているわけにはいかないのでしょう。

 

ですがその部分におけるリアルの追及は「楽しむことが目的の不特定多数を対象としたゲーム」を成立させる上での現実味は一切ないわけで、体験型ゲームの非日常性を演出する場合において入口の偶発性というアプローチは不可能だし問題外だったんだな、というのが実際「人身売買?」と尋ねられて漠然と思ったことでした。

 

 しかし、13日目の花岡さんの記事(とても面白かったです)にもあるように、同じことを何度も繰り返していると慣れます。慣れると飽きます。コンテンツはどんどん消費されていくので、より刺激的にならなくてはいけません。最初は画面から3次元に出てきてくれるだけで面白かった脱出ゲームが、もっと近く、もっとリアルに、日々斬新さを保たなくては琴線に触れなくなってきます。そういった場合どうすればプレイヤーの満足度をあげることができるのか、二番煎じ甚だしくて恐縮なのですが、やはり演出が一番手っ取り早いのかなと思います。

 

 

 

 

 「魔法少女は眠らない」では、魔法書という設定の本型ボックスに変身アイテムのコンパクトを入れました。ヘンゼルとグレーテルがモチーフの「House of Candy」では飴やら骨やらその他もろもろを。遊んでくれる人に、少しでもその物語の登場人物であるというイメージを持ってもらいたいというコンセプトが、今思えばあったような気がしないでもないです。いや、ありましたね。すいません、ありました。

 

 

わたしは過去の謎解きイベントを振り返るとき、2つの基軸から考えることが多いです。どんな体験をさせてくれたかと、謎構成の美しさです。これまで書いてきたのは前者がメインでしたが、謎自体もとても大事ですよね。

 

恥ずかしながらもともと全く謎が解けない人間なので、リアル脱出にはまった当初は解説で膝から崩れ落ちるために公演に出向いていました。失敗したとしても清々しく後悔させてくれる公演は、やはり謎が美しくないと成立しないでしょう。そして謎至上主義の友人が言う、「非日常体験なんて毛ほどもいらない。謎さえ美しければそれでいい」という言葉に納得してしまう部分も確かにあるのです。その2つがMAXパワーでハイブリッドしたらそれこそ最強コンテンツなのかもしれませんが。

 

 

わたしも本当はそういう謎が作りたいのですがなかなかできないので、持ち帰り謎というジャンルの中で、まずは演出に力を入れようと念じてできたのがSMOFという団体です。
映画で言うと、本当は「キサラギ」みたいなの撮ってみたいけど偉大な先人には絶対に敵わないからわたしは「アバター」を最終目標に据えてがんばる!3Dで飛び出してやる!って感じです。例によってアバターを観ていないのでこのたとえが正しいのかは不明です。「キサラギ」はまじで面白いのでぜひ観てください。

 

 

 

 最終的に自分たちの話になってしまいました。個人的には、何の前触れもなく突発的に始まるサプライズ謎解き、すごく好きなので内輪向けに作っていきたいですし、SMOFでもゆくゆくは4Dのキサラギが作れたらいいなと思います。今後とも、チャンスがあればよろしくお願いしたいです。ここまで読んでいただいて本当にありがとうございました。
またAdventCalendarを企画してくださった山本さん、素敵な機会をありがとうございました。ここまでずっとカレンダーのつづりをCalenderと書いていたのですが、あげる前に気づいて本当によかったです。
バカがばれずに済みました。



 

 

 

 

さとう